ただ春を待つ

年末の街のもの寂しい雰囲気は好き。飲んで温まって勢い飛び出して、人のいない街の空気に浸ると不思議と昂揚する。たぶん人の熱が平時と比べて少ない分、寒くてすぐに酔いが醒めるんだけどね。そしたらなんだか次は静かな酒でも飲もうかってことになってウイスキーとか開けたり。まだ盛り上がりそうな空気を感じながらみんな気取っていつも通りの調子で喋って、でもなんだか今、年を跨ぐ時くらいはいい子ぶってまともなことを言ってもいいんじゃないかってことは認めて。冗談めかした言葉からぽろぽろと気持ちが零れて、来年こそは!だなんて似合わない大風呂敷を広げて。盛り上がって飲んで気づけばもう日は昇りきってて。とりあえず初詣に行ってそのまま帰るよ。風邪引くなよ。次は来週な。

そんなまとも過ぎる年末はもうどうでもよくて。今は勉強がしたくて。今年の反省とかそんなのは受験が終わってからで。この熱を絶やさないことが何よりも大事で。明日から放っておいたセンター試験の勉強をまたやり始めること以外に気をやりたくはなくて。

他にやることと言えばさすがに掃除くらい。でも正月の雰囲気に呑まれて寂しくなったら電話くらいするかも。春にはもっと言いたいことがあるんだ。

お前、今年はどうしたの? ちょっとやることがあって。大変だね、そういえばあいつも帰って来てるよ。ちょっと代わってよ。あぁもしもし?久しぶりに帰ってきたのに、お前…。ごめん、向こうはどう? まあまあだよ。雪凄いらしいね。まだ普通くらい、それよりせっかく寒い中いい地酒買って帰ったのに…。ごめんって、春にはまた帰るだろ?その時奢るからさ。朝までな。いいよ、話すこともあるし。何かあった? まだない。なんだよそれ。まあ取り合えず春ね、向こうで頑張ってよ。お前も頑張れな。うん。  あぁ、そういえば明けましておめでとう。こちらこそ、今年もよろしく。